遺言書がある場合(よくあるトラブル)
相続が発生したらまず行わなければいけないのが遺言書の有無の確認です。
なぜなら、遺産分割において最優先されるのが故人の意思=遺言だからです。
そして、もし遺言書が出てきた場合にはすぐに開封してはいけません。
遺言書の種類によっては開封してしまうと罰金が発生する場合があるからです。
よくあるトラブル
ケース1 遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合
相続人が遺言を残している場合には、原則その遺言内容が優先されます。
しかし、遺言の存在を知らずに遺産分割協議を行ってしまったというケースもないとは言いきれません。
遺言書が見つかったとしても、共同相続人が先に行っていた遺産分割協議に納得している場合は遺言書で指定している分割を行う必要はないように思われます。
ただ、共同相続人が遺言書に準じた分割を行いたい、と申し立てた場合、遺言書に従った分割を行うことになります。
ちなみに、相続人全員が遺言書の存在を知らず、遺産分割協議後に分割方法を指定した遺言書が見つかった事件があります。これについて最高裁は「遺言の存在を知らないで行った遺産分割協議は、要素の錯誤により常に無効になるとはいえない」と解される判決(平成5.12.13)を下しています。
このことから、遺言書が見つかる前に行った遺産分割協議でどれだけ納得しているかが遺言に従うか否かのポイントになってくると思われます。
ケース2 遺産分割協議後に新しい財産がでてきた場合
新たに未分割の遺産が判明した場合、成立した遺産分割協議を無効として再度、遺産を分割するのか、それとも新たに判明した遺産のみ分割するのかは、見つかった遺産によって変わってきます。
以下で当初の遺産分割協議が無効とされるケースと未分割の遺産のみ分割すればよいと考えられるケースについてそれぞれ見ていきましょう。
遺産分割協議が無効となるケース
一旦有効に成立した遺産分割協議は、特別な理由がない限り、相続人は合意した内容に従う義務があり、後になってやり直しを求めることができません。
ただ、新たに判明した遺産が重要なもの(不動産など財産として高額なもの等)で、当事者(相続人)がその遺産があることを知っていた場合、従前に行われた遺産分割協議は公平に行われたとは認識されにくくなり、当初の遺産分割協議は無効とされ、遺産分割協議のやり直しを行わなくてはならないケースもあります。
未分割の遺産のみ分割すればよいケース
遺産分割協議が有効に成立した後、新たに遺産が判明したときは、新たに判明した遺産のみ共同相続人間で協議を行えば事足ります。ゆえに多くのケースが遺産分割を最初からやり直す必要はありません。